Date: 2020/05/09

紳士靴の羽根とトウに見る品格

おはこんばんちは。
カミュはペストより異邦人が好きな瀧澤です。

突然ですが、女性の足を美しく見せるハイヒール。そのルーツには諸説あるそうですが、そもそも踵の高い靴( ≒ ハイヒール )は15世紀中頃に男性靴として登場したのだそうです。この時代、男性のセックスシンボルはふくらはぎだったそうで、高貴な方々はふくらはぎを強調するために、タイツの中にパッドを入れたり、ハイヒールを履いたり、ふくらはぎのたくましさをアピールするあの手この手で大忙しだったのだとか。「その話、もう少し詳しく!」という方には 中野香織 (2000) 「スーツの神話」 という本がおすすめです。

さて、時は移って現代。普段男性がハイヒールを履く機会はほぼ無くなってしまいましたが、靴は今も重要なファッションアイテムの一つですよね。「人を見るときは靴を見ろ」とはよく言いますが、白のTシャツにジーンズといったシンプルなスタイルでも、しっかりお手入れされた革靴を履いているだけで、ちょっとお洒落に見えるから不思議です。

ところで皆さんは毎日仕事に行くとき、どんな靴を履いていますか?
パーティーや冠婚葬祭、服装に気を使わないといけないとき、靴の選択に迷ったりしたことはありませんか?
というわけで今回は、お出かけやお仕事からカジュアルまで、幅広く使える男性用のドレスシューズ(レースアップの革靴)のデザインについて。

内羽根と外羽根

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まず紳士靴の構造を見てみると、普通は靴紐を通すアイレットと呼ばれる穴が5つ対になっています。そのアイレットの土台となっている羽根部分の構造の違いで靴は「内羽根」と「外羽根」の2種類に別れます。

内羽根はアイレットのある羽根が甲皮と一体化したデザインで、イギリス王室のアルバート公が考案したそうです。現在のスーツスタイルはイギリス発祥ですが、靴も例外にあらず。内羽根は甲がスマートに見え、フォーマルなシーンに向いたデザインなので、お仕事に使う靴で迷ったら、内羽根の靴を選んでおくと間違いありません。

対して外羽根は甲皮の上に羽根が乗ったデザインで、紐の締め具合でサイズ調整がしやすい構造になっています。こちらは機能性を重視した軍靴がルーツ。ぼってりと、カジュアルな印象が強くなりますが、ジーンズやチノのようなラフなスタイルにも似合います。

さて、羽根の構造に加えて紳士靴で重要になるのがつま先のデザインです。
先に述べた羽根の構造と、つま先のデザインの組み合わせで、靴のフォーマル度や品格が変わって来ます。

ストレートチップ – キャップトウ

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まずは王道のストレートチップ(キャップトウ)。
つま先が直線の切り替えになっている靴です。
黒の「内羽根」×「ストレートチップ」は紳士靴の中では特殊な存在で、準正装用のフォーマルシューズという位置づけなので、冠婚葬祭やパーティーなど、とにかく「きちん」とした格好をしなければいけないときには、内羽根ストレートチップを履いておけばOK。1足は持っておきたいですね。
ちなみに縫い目にメダリオン(飾り穴)のついたストレートチップは、飾り穴の数でハーフブローグとかパンチドキャップトウなどと呼ばれており、後述のフルブローグに近いカジュアル寄りの靴になります。準正装の場ではマナー違反と見られることもあるのでお気をつけくださいね。
それから「外羽根」×「ストレートチップ」。こちらはビジネス向けのキレイめから、キレイめワークブーツまで様々なスタイルがあります。みなさんも1足はお持ちなのではないでしょうか?

プレーントウ

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一番シンプルなプレーントウ。
つま先に切り返しのないツルッとした表情の靴です。
黒の「内羽根」×「プレーントウ」もちょっと例外的な靴で、正装(モーニング・燕尾服・タキシード)の際にオペラパンプスの代わりに履くことができます。とはいえ正装をする機会自体、普通の方は結婚式の主役になるとき以外あまりないと思いますので、それほど気にしなくてもいいお話ですね。
ちなみにオペラパンプスというのは、黒のエナメル製スリップオンに黒のリボンが付いた、紳士靴の中で最もフォーマルな靴です。
対して外羽根のプレーントウはまさに軍靴のイメージ。ポストマンシューズやワークブーツなど作業靴も大抵このスタイルで、かなりカジュアル寄りでぼってりとしたイメージになりやすい靴です。それだけにデザイナーも様々な挑戦をしていて、3アイレットに鋭角な羽根が付いたなものなど、スーツスタイルに合わた靴も色々とあるようです。

ウィングチップ – フルブローグ

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最後はフルブローグ(ウィングチップ)。
つま先が鳥の羽のような形の切り替えになっており、メダリオン(穴飾り)のついた靴です。
イギリスのカントリーシューズがルーツで、メダリオンと呼ばれる飾り穴は、ぬかるみに足を入れてしまった際に水はけを良くするために付けられたのが始まりなんだとか。内羽根ならスーツスタイルからカジュアルまで様々な用途に使えます。外羽根のウィングチップはイギリスのブーツメーカーで有名なモデルもあり、外羽根プレーントウに次いでカジュアルな印象になりますが、茶のウィングチップはジャケパンスタイルなんかにはとってもマッチすると思います。

最後に

Uチップやローファーなど、他にも様々なスタイルがありますが、ビジネスからカジュアルまで、シーンを問わず使えるトラディショナルな紳士靴はこの2タイプx3タイプの6種がおすすめです。
この文章をご覧の学生さん、まずは黒の内羽根ストレートチップから手に入れられてはいかがでしょうか。
靴に関するちょっとした読み物は 竹川圭(2007)「紳士 靴を選ぶ」 がおすすめです。

おやじの靴を 履いてみた
俺にはちょっと キツイけど
なかなか渋い 音を出す
Stepping slipping It’s my daddy’s shoes.

– Alexander Ragtime Band (1981)

瀧澤

この記事を書いた人

大阪南森町でデザイン会社を営む両親のもとに生まれ、幼い頃からデザインとワンちゃんに囲まれた暮らしを送る(現在の愛犬は「ガブリエル」と「歌乃さん」)。大学院時代に渡った韓国でデザイン会社を設立し、帰国後もデザイン畑で腕を磨き続けた経歴の持ち主。寝るの大好き、根っからの酒呑みだが、アルコールというガソリンは、ステキなアイデア出しに欠かせない。高校時代、通天閣でエレベーターボーイを経験したこともある“はっきりボイス”と、多角的な企画・提案ができる“使えるおじさん”として、存在感を発揮している。