初めまして。
昨年10月より株式会社AND SPACEの一員になりました下間(シモツマ)です。
先祖は下間頼廉の分家のどれかだとか。
獣医学部卒業からの理学修士取得後、獣医師として勤務したのち、現在はコーダーおよびエンジニアの卵として修行中です。
一文字目からお気付きの通り、経歴は散らかっています。
さて、生物畑にずっと身を置いていたので、今日は生物学的視点も交えつつWebの世界をテーマに書いていこうと思います。
生物界では、生物がどのように進化してきたのか諸説あり、議論はつきませんが、ダーウィンの進化論については、多くの人が1度は耳にしているんじゃないかと思います。
要するに環境にうまく適応できる子が生き残り、適応できなかった子は淘汰されるっていうやつです。
実は進化生物学の考え方は、非生物であるWebの世界でも応用されているのです。
どんな形であれ、生物がちょっと絡むだけで心踊るのは私だけでしょうか。
特に2016年頃から盛んに研究が進んだのはソーシャルタギングの分野です。
ソーシャルタギングとはオンライン場で投稿された画像や動画などのコンテンツにユーザがタグをつけ、共有する仕組みのことを指します。
タグはコンテンツが一体どんなものなのかを知る手がかりになったり、キーワード検索の検索対象にもなります。
インスタグラムやTwitterでもハッシュタグを使って様々な情報が管理されています。
ちなみに
#猫
#ファッション
#東京
#可愛い
などが人気タグのようです。
人気者のタグたちはちょっと検索しただけで膨大な情報が得られるのに対し、
全く人気がないタグは検索してもわずかな情報しか得られず、そもそも使われもしません。
ある日突然この世に生まれたタグたちは人々に使用され、選択され、淘汰されていくというわけです。
タグ界も弱肉強食の世界なんですね。
では、どんなタグが人々に利用され続けるのか、
タグたちの生存競争について、これまでの研究成果も踏まえて少し紹介させていただきます。
●明日を生き抜くには、たくさん使ってもらえ
ソーシャルネットワークサイトにおけるタグ使用頻度の順位と頻度数、
さらには、新しい種類のタグの増加率がベキ分布に従うことがわかっています。
ここで、べき分布とは何ぞやと思っている方も多いと思うので補足します。
概要としてはほとんどの集団が0に近い数値をとるのに反して、
一部の集団だけ極端な値をとる分布を指します。
グラフで表すとこんな感じになります。
世の中のいろんな事象がべき分布に従っていると言われているのですが
例えば地震。観測できるか出来ないかくらいの地震がほとんどなのに
中には東日本大震災のように甚大なダメージを与える大規模な震災が起きます。
この時の地震の規模と発生頻度はまさしくべき分布になります。
さて、本題。
頻度の順位と頻度数,さらには,新しい種類のタグの増加率が
ベキ分布に従うということはつまり
新しいタグが生まれた時に、その子が生き残れるかどうかは
たくさん使ってもらえるかどうかで明暗がはっきり分かれる
ということになります。
なので、より多くの人が想起しそうなタグが優位というわけです。
●明日を生き抜くには、長いものに巻かれろ
タグ付けをする際、既に使用されたことのあるタグ、
かつ使用回数が多いタグほどより選ばれやすいという
「優先的選択性」があることがわかっています。
ソーシャルタグの世界は新参者に対して厳しい世界なんです。
新参者が生き残るには、長いものにグルグルに巻かれてしまう
つまり似たような関連ワードを選択するのが良さそうです。
●明日を生き残るには、イイネを勝ち取れ
たくさん使ってもらえるタグはつまりイイネをたくさん貰えたタグということわけです。
ある時点から時系列的にタグを追跡して行った時に
初期のタグ(親タグ)のイイネが多いタグほど、その後の利用率は増加し、
さらに、イイネが多いタグを複数組み合わせるスタイルへとタグの利用方法が変化して行きます。
その結果、イイネ数とタグの使用回数はどんどん比例して多くなるというわけです。
また、親タグ以降に生まれた新しいタグ(子タグ)は、よりイイネが多かった親タグに近しいワードがどんどん生まれます。
イイネをいっぱいもらえた人気者は自分の子孫をどんどん増やすことができ、イイネが貰えなかったタグたちは徐々に淘汰されてしまうということです。
●もはやただの#ではない、ハッシュタグ
ソーシャルネットワークを利用するユーザーにとってもっとも身近なタグとも言えるのが、SNS上で日常的に利用されているハッシュタグではないでしょうか。
ハッシュタグはいわばSNS時代のメッセージタグラインであり、メディアにユーザーが参加するための手段です。
自身の体験や思いをハッシュタグにまとわせたメッセージでシェアし、その規模が拡大していくと「ハッシュタグアクティビティ」とも呼ばれます。
2017年に生まれたハッシュタグ「#MeToo」は、ハッシュタグアクティビティの代表例と言えるでしょう。
#MeTooは拡散に伴い、#WithYouというハッシュタグへと進化しました。
これにより「告発」が「被害者に寄り添うケア」へとメッセージが拡張されたのです。
ハッシュタグの進化が、ソーシャルアクションにも強いインパクトを与えることが証明された一例ですね。
ハッシュタグアクティビティの事例でも見られるように、ハッシュタグは人々の距離を縮め、繋げることで、関係性を発展させます。
インスタグラムでは「#○○好きな人と繋がりたい」というハッシュタグが人気です。例えば「#おしゃれな人と繋がりたい」は投稿数約50万件以上あり、ユーザーはこのワードを検索するだけで、関心のコミュニティをつかまえることが可能になります。
このように、今やタグをつけて投稿することはモノやコトに関する意味付けや分類の枠を超えて、個人の考えやアイデアを共鳴させ、繋がりや連帯の符牒として機能しています。ユーザーが多用するハッシュタグを観察し、うまく活用すること、それによってコミュニティを築くことは、マーケティングやビジネスの面でも重要な課題と言えるでしょう。
●最後に…
日々変化し続けるWebの世界ですが、かの有名な生物学者ダーウィンがこんな言葉を残しています。
“最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。
唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者である。”
生物学的には、進化と進歩は全く異なるものとして考えられています。
キリンの首が長いのも、高いところにある葉を食べたかっただけで、そのせいでキリンは長時間頭を下げることも長時間横になることも出来ません。
このようにキリンの首が長いのは進化であり、進歩とは少し違いますよね。
周りとの優劣だけ気にして虚勢をはる人よりも、目的や環境に合わせて、自分を臨機応変に変えていける人の方が生物学上は優位のかもしれません。
andspace
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