Date: 2019/01/11

谷川金次郎ゼミナール①「雑読のすゝめ」

寒中お見舞い申し上げます。

作務衣にマタギ風はんてんスタイルで寒さを凌ぐ、コピーライター兼ディレクターの橋田です。

「平成」の時代も残すところあとわずか。本年もよろしくお願いいたします。

 

さて、新年早々、AND SPACEブログにひとネタぶっこむことになりました。

新シリーズのタイトルは「谷川金次郎ゼミナール」

内でときたま開催される弊社代表(谷川純平)の講座内容を、ざっくりまとめてみました。という企画です。

薪を背負いながら本を読む、勤労・勤勉の象徴としてお馴染みの二宮金次郎に敬意を評し、仕事の合間に学を深めるAND SPACEの日々の一端を一般公開いたします。

最初のお題は、情報過多の現代を生きるすべての人に役立つ(であろう)、「雑読のすゝめ」です。

 

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密度の濃い情報を短時間でインプット

新しい情報が欲しい、学びたい分野のことを知りたい、降って湧いてきた興味関心を深めたい。

そんな◯◯したい!と思う気持ちは、日々の仕事や生活の中に溢れています。情報を集める手段、新たな知識を取り入れる手段は、本やインターネットなど様々。

目的に合ったテーマの本を買ってきてまるまる読み込んだり、ネット検索でヒットした幾つものWebサイトに目を通したり、時間と手間さえかければ“中身”の濃い情報は“手”に入る時代です。

しかし、果たして、本当に、“密度”の濃い情報が“頭”に入るでしょうか?

 

願わくは、できるだけ短時間で、密度の濃い情報をピンポイントでインプットさせたい!

そんな時に役立つのが、業務効率化の鬼である谷川金次郎先生が提唱・実践する「雑読のすゝめ」です。

 

一般的に「雑読」とは、特定の目的を持たずにいろんな本を読みあさることを指します。いかにも暇つぶしの読書といったテイストの言葉ですが、ここでは違います。

文字通り「雑に読むこと」を奨める内容ですから、誤解なきよう

 

人間の記憶の忘却曲線

「雑に読む」ことの大前提となるのが、人間の記憶の忘却曲線です。

きょう覚えたはずのことも、一眠りした翌朝には48%しか覚えていません。半分は忘れてしまうのです。

2週間も経ってしまえば、たったの20%。自発的に復習したり、会話に登場したり、わざわざ気にかけない限り、人は物事をあっという間に忘れていきます。

 

私たち人間は皆、忘れやすい生き物なんだ。

このことを自覚し、はなから「20%だけ覚えられれば御の字」と思うこと。

1冊の本や、1つのWebサイトから、記憶したい大事な20%〜30%の要点をつかむ手段こそ、今からご紹介する、雑に読む「雑読」なのです。

 

ただし!向き不向きはあります。

数ある本の中でも小説はダントツで不向き。雑に読んで、感動を味わえる訳がありません。

これはあくまでも、大まかに情報収集をしたい時、概念的理解を得たい時などに使える必殺技と心得ましょう。

 

本を開く前の、Google検索

とあるデザイナーは思いました。「タイポグラフィ(文字デザイン)がもっと上手くなりたい」と。

そのデザイナーは出かけました。「ためになりそうな本を買いに行こう」と。

谷川金次郎先生は言いました。「タイポグラフィに関する本を最低2冊は購入しなさい」と。

そして、「本を開く前にググりなさい」と。

 

◯◯したい!と思ったら、本を読む前にまずはインターネットで下調べ。

このひと手間が、素早く、手早く、知りたい情報にたどり着く近道となるのです。

では、下調べの方法をご紹介します。

 

検索上位のサイトを雑に確認

先ほど登場した、タイポグラフィの上達を目指すデザイナーの場合、「タイポグラフィ上手く」「タイポグラフィ 上達」「タイポグラフィ コツ」などのキーワードでGoogle検索。

検索上位10番目までのWebサイトやブログ記事を開いて、どんな内容の記事が掲載されているかを、雑に目を通しましょう。

目次のあるページであれば、超ラッキー。自分の知りたい情報が載っているのかいないのかが簡単に確認できます。

 

1つをじっくりより、複数をざっくり

直感的に、“良さそうなサイト”が幾つか見つかったら、開いたページをささっと最後までスクロール。

ここで、学びたいと思っているフレーズ、興味が湧いたフレーズの見つかった箇所だけに目を通すのがポイントです。

「これはいらん」「これは良さそう」の2択を瞬時に判断する思い切りの良さが肝心要です

谷川金次郎先生いわく、「ファーストビューの印象が大事。すっ飛ばすことをためらうな」とのこと。また、「1つのサイトを10分かけてじっくり読むより、2つのサイトを5分ずつざっくり見る。この方が、頭に入る知識、記憶に残る情報は絶対的に多くなる」と言います。

 

Google検索という前段階を経ることで、買ってきた本の読むべきポイント、知りたい内容の整理が自ずと浮き彫りになるのです。

 

雑読に欠かせない、目的の明確化と目次の熟読

では、いよいよ本を雑に読む時間です。

「さっきから『雑読』だ『雑に読め』だ言ってるが、せっかく買ってきた本を最初から最後まで読まないなんて、作者に、出版社に、本そのものに失礼だろ!」

そんなお声が、そこかしこから飛んできそうではありますが、これはあくまでも、情報収集能力を上げるコツのお話。

むしろ、その本の存在価値を正確に見極め、自分にとって本当にためになる知識や情報をインストールするためのお話です。

 

すべてはインデックスから始まる

「その本の言いたいことは、目次(インデックス)を見たらだいたい分かる」

谷川金次郎先生は、目次の熟読が欠かせないと語ります。

目次の項目がしっかりした本であればあるほど、その本の言いたいことが分かる場合もあり、書店で本を購入する際のポイントにもなります。

 

私は今、どんな情報を得たいのか?

本の目次を熟読した私は、この本からどのような情報を得たいのか?

雑に読むためには、めちゃくちゃ明確に目的を決める自己判断力が求められます。

最初から順を追って読み進めていきたい気持ちをぐっと抑えて、自身の目的や求めに合致した内容のところだけを読む勇気を持つこと。

迷ったら捨てる“情報の断捨離”をできるかどうかが、情報収集の玄人となる最善の道です。

読まないことへの罪悪感も捨てて、思い切って、すっ飛ばせ!

 

その本が、あなたのバイブルなら

運命の人との出会いがあるように、“わたしのバイブル”と呼べる本との巡り会いは、いつ訪れるか分かりません。

たまたま手にした本が、雑に読み始めたはずの本が、自分自身の仕事や人生観において必要不可欠な存在になることはあります。

そんな生涯の友とも呼べる本と出会ったなら、どうすべきか?

谷川金次郎先生は「雑に何度も目を通すこと」を奨めます。

幅広い知識や物の見方が求められるビジネスマンにとって大切なのは、やはり、1冊の本をじっくり時間をかけて読み込むよりも、3冊の本を3分の1ずつ読むほうがよっぽど良い。

これこそが、谷川金次郎先生の辿り着いた“境地”なのです。

 

雑読能力向上の鍵は、時間設定とすっ飛ばし部分の選定

本やWebサイトを“雑に読む能力”をUPさせるポイントとして、すっ飛ばしてもいい部分の見極めと、徹底した時間設定があります。

読む必要のない可能性が高い部分と判断しやすいキーワードの代表例が、「この章では」「次の章では」「例えば」「応用編」「実例」などです。

得たい情報の本質だけを読みたい場合、これらの枕詞や章題が目に飛び込んできたら、ズバッとすっ飛ばしましょう!

また、自分自身が既に知り尽くしている箇所、どうも興味が持てそうにない箇所、ざっくりは知っているがしっかりは知らない箇所も、すっ飛ばせる対象です。

これらを除けば、雑に読む「雑読」の準備は整います。

 

時間設定は雑読に効果的なトレーニング

手っ取り早く、必要な情報収集を行うことを目的とした雑読ですが、慣れるまでには多少のトレーニングも必要です。

習慣化のために効果的な訓練法として、谷川金次郎先生は「明確な時間設定」をおすすめしています。

雑読によるWebサイトの検索時間、本の閲覧時間の目安は15分〜30分

集中力が途切れない範囲、本読み以外の雑念が取っ払える時間を各自が設定してみると良いでしょう。

効率化と集中力のUPには、雑読に限らず、時間制限を設定することが最も効果を発揮するのです。

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いい加減じゃなく、良い加減で

忘れやすい人間なんだからと自覚して、必要なとこだけ「雑に読む」。

業務効率化に有効な雑読の方法をご紹介しました。

おそらく、皆さん、このブログを雑に読まれたことだろうと拝察いたします。

が、逆に言えば、雑には読みづらい文章を書くことがライターの腕の見せどころなのでは?と思ったり。「最初から最後まで一気に読んでしまったわぁ」が、ライター冥利に尽きる瞬間だったりするのかな?と思ったりしてます。

 

「雑」って言葉は、「いい加減」とも言い換えられます。

仕事も生活も、いい加減なことをしていい訳がありません。

でも、この「いい加減」を変換して「良い加減」と捉えれば、「雑」の意味もスッと腑に落ちませんか?。

 

いい加減じゃなくて、良い加減で本やWebサイトを読む。

谷川金次郎先生が言いたかったのは、そうゆうことだと思うのです。多分。

(いい加減なまとめでかたじけない)

 

最後に、本家・二宮金次郎が残した格言をご紹介し、失礼します。

「世の中は、知恵があっても学があっても、至誠と実行がなければ、事は成らない」

橋田

この記事を書いた人

作務衣を身にまとい、“センス”を持ち歩く、京都出身の癖ある渋男。寺社仏閣専門紙の記者(おてライター)として働くこと10年の経験を活かした、多彩な「言葉遊び」と「韻を踏みがち」なライティングで、テンポの良い文章を奏でる。生きた動物は苦手なのに、アニマル柄好きという風変わりな趣味でデスクは散らかり気味だが、原稿と案件はちゃんと整理整頓できるのでご安心を。社内では、話が長いで有名なお爺系ムードメーカー。仕事のスタイルは、そんな人柄がにじみ出る「義理と人情」で打席に立つスイッチヒッター。