こんにちは、システムデザイナーの今井です。
今回は印刷物のデザインをする際に注意することについて書かせてもらいます。
僕は前職で印刷会社のデザイン部で働いていた経験があり、印刷物のデザインについてのデータの作り方は、一般的なデザイナーより詳しいと自負しています。
そんな元印刷会社デザイナーが意識している印刷物用デザインデータの注意点を、駆け出しグラフィックデザイナーに向けてまとめましたので、若手デザイナーの皆さんはぜひ一度ご覧ください。
もくじ
- カラー設定はCMYKにする
- 全色100%のリッチブラックはNG
- K100%のベタは要注意
- 特色の使い方にも要注意
- 塗り色設定をした罫線はデータ的には透明扱い
- テキストの全角半角が混在しないように注意
- 配置画像も必ずCMYKにする
- 配置画像の解像度は掲載サイズで300dpi〜350dpi
- 塗り足しを考慮してデータを作る
- ラスタライズ効果設定を高解像度に設定
1.カラー設定はCMYKにする
CMYKとRGBの混在はデザイン初心者がよくやってしまうやつです。
CMYKとは色材の3原色と呼ばれるシアン・マゼンタ・イエローとそれにブラック追加したもので、印刷物は基本的にCMYKの4色で印刷されます。(特色については後述)
RGBは光の3原色で、モニターなどデジタルデバイスで表示するために使用されるものですので、CMYKとはまったく別物と考えていいと思います。
印刷物のデザインをRGBで作ってしまった場合の最大の問題は、デザイン上の色と印刷物で仕上げる色が全く違うことになってしまうことです。
なぜそうなってしまうかと言うと、RGBで表現できる色の範囲とCMYKで表現できる色の範囲が違っていて、CMYKの方が色の範囲が狭いからです。
下の図がRGBとCMYKの色範囲です。CMYKで表現できる範囲がどれだけ小さいかがわかりますよね。
下の図はRGBをCMYKにそのまま変換した場合の色の違いになります。
もしもRGBでデザインデータを作ってしまった場合、印刷の仕上がりはこれぐらい違う物で上がってきてしまうことになりますので、最悪の場合は自己負担で再印刷となってしまいます。くれぐれも気をつけてください。
2.全色100%のリッチブラックはNG
漆塗りのような深い黒を印刷で表現しようとすると、黒1色ではなく他の色も混ぜ合わさないと表現できません。
だからと言ってCMYK全色を100%にしてしまうと印刷会社から印刷できないと突き返されてしまいます。その理由は乾かないからです。
絵の具と同じように考えてもらえばわかりやすいと思いますが、何重にも同じ部分に色を重ねて塗ると当然乾きにくいですよね?印刷もそれと同じで、全色ベタで同じ部分に色をつけると乾きにくくなってしまって、上に重ねた紙に転写されてしまうというトラブルになってしまいます。
実際にほとんどのネットプリントなどの注意事項に、リッチブラック禁止という内容が記載されています。
では、深い黒を表現したい時はどうすればいいかと言うと、ブラック以外の色を50%ずつ足して、合計250%に抑えるという方法がおすすめです。
250%濃度まではほとんどの印刷会社で対応してくれるので、この方法で深い黒を表現しましょう。
3.K100%のベタは要注意
印刷の仕様で「オーバープリントブラック」というものがあります。これはK100%のテキストやオブジェクトは背景色を生かしたままブラックを上塗りするという仕様です。
印刷の基本的な話しですが、例えばデータ上で背景に赤ベタが敷いていたとしても、その上にテキストなどを配置した場合、版を作る時にその部分の赤は白抜きになり、白抜きの部分にテキストなど配置されたものが印刷されることになります。
ですが、オーバープリントブラックの場合は白抜きにならず、色が付いている上に乗せる形で印刷されることになります。
なぜこういう仕様かと言うと、K100%の小さい文字を印刷した時に版が少しずれても印刷ミスにならないようにするという理由です。この仕様のためにK100%のものはすべて上塗りすることになるので、K100%のベタは透けるように印刷されてしまうことになります。
これを回避するためにはK100%以外の数値にすればOKです。単純にK100%だけにこの仕様が適用されてしまうので、それ以外であれば何でもいいわけですが、個人的におすすめなのは何か別の色を10%だけ足すという方法です。
K100%にしているのは濃い黒にしたいということだと思いますので、k99%でもオーバープリントブラックは回避できますが、この場合だと薄くなるより濃くなってほしいと思いますので、別の色を10%足す方がおすすめだと思います。
4.特色の使い方にも要注意
印刷には特色というものがあります。CMYKでは表現できない色で印刷したい時に使用するものですが、DIC株式会社(旧社名:大日本インキ化学工業株式会社)が製造している「DICカラー」が代表的なものになります。
元々IllustratorにはDICカラーのパレットが備わってるのですが、デザイン初心者の中にはこのパレットの色を使って普通に印刷してもらえるものだと思っている人をよく見かけます。印刷指示無く特色を使ったデザインをした場合、RGBと同様にそのままCMYKに変換されて、全然違う色になって印刷されてしまいます。
ですので、特色を使いたい場合は印刷発注時にきちんと特色印刷の指示をしましょう。そもそも特色を使用しない(できない)場合は、DICカラーなどの特色は使用せず、CMYKのみでデザインしデータを作りましょう。
5.塗り色設定をした罫線はデータ的には透明扱い
これもデザイン初心者によく見られる間違いで、デザイン上に細い線を引きたい時に「塗り」に色を付け「線」に色を付けずにデータを作ってしまうというものです。
この場合、画面上では髪の毛ぐらいの細い先が引いているように見えるのですが、実際には何も印刷されません。データ上は透明の線が引いていると認識されてしまうんです。もしそのまま印刷されてしまったら最悪な結果になってしまいますよね。
そんなことになってしまわないように、線を引きたい場合はきちんと「線」の方に色をつけるということを覚えておきましょう。
6.テキストの全角半角が混在しないように注意
これは印刷物に限らない話しですが、主に括弧や記号によく見られるもので、全角半角の使い分けができていないデザイナーさんをよく見かけます。
使い分けができていないと、間違っているということではないのですが、デザイン的には少しクオリティが下がることになってしまいます。
例えば括弧だと半角は少し下にずれるフォントが一般的ですし、数字は全角の場合に文字間が広くなります。これらを理解せずに使用してしまうのはデザイン的に良くないです。
全角半角の特性をきちんと把握してデザインするように注意しましょう。
7.配置画像も必ずCMYKにする
よく理解されていなかったり、見落としがちなのが画像のカラー設定です。
画像のカラー設定もIllustratorのカラー設定と同様に、RGBでは前述の通り印刷の際に色が強引に変換されてしまいます。
印刷の仕上がりで、画像がくすんだように見えるのはこれが原因かも知れません。
そのようにならないために、印刷物のデザインをする場合は必ず画像のカラー設定を確認し、CMYKにするように注意しましょう。
8.配置画像の解像度は掲載サイズで300dpi〜350dpi
画像解像度のことを理解できていなくて確認せずに画像を配置しているひよっこデザイナーさんもよく見かけます。
解像度が低いと画面上ではきれいに見えたとしても、印刷するとかなりぼやけていたり、ザラザラした画質に見えてしまいます。
印刷できれいに見える解像度の基準は300dpi〜350dpiです。もちろんこれはIllustrator上の表示サイズで、この解像度以上になっている必要があります。Photoshopで確認した時に解像度を満たしていたとしても、Illustratorに配置後に拡大してしまうと、実質は解像度が低くなってしまっていることになりますので、そのような扱いをしないように気をつけましょう。
なお、元々解像度が低い画像を無理やり300dpi以上に修正しても画像がきれいになるわけではありませんのでご注意を。
9.塗り足しを考慮してデータを作る
印刷物のデザインデータを作る際には、ほぼ必ず「トンボ」というものが必要です。
印刷用語での「トンボ」とは、印刷物を断裁する際のガイドとなる線のことを言います。(トリムマークとも言います)
トンボは通常、四隅と上下左右のセンターに付けるのですが、実寸からトンボまで3mmの空きがあり、この部分を「塗り足し」と言います。
「塗り足し」とは、デザインを3mm付け足した部分のことで(言葉の通り塗って足した部分)、断裁が多少ずれても問題ないようにするための保険みたいなものです。
印刷物のデザインに慣れていない人は、この塗り足し分を考慮せずにデザインしてしまっていることがあります。
例えば、画像の端を仕上がりの端にしてしまい、3mm伸ばす分がないという状態です。こうなってしまうと画像を拡大してデザインを変えるしか解決策はありません。
そうならないために、デザインを始める段階から3mmの塗り足しを考慮して作成するようにしましょう。
10.ラスタライズ効果設定を高解像度に設定
Illustratorの「効果」メニューに「ドキュメントのラスタライズ効果設定」という項目があります。間違えて設定すると意外と大変なことになってしまいます。
これはどういうものかと言うと、ドロップシャドウや光彩などのIllustratorでできるPhotoshop効果のようなものの解像度を決めるものです。
この設定が72dpiなどの低解像度に設定されてしまうと、効果がボケて印刷されることになってしまいます。
通常はデータの新規作成時に選ぶので、間違った設定になりにくいものですが、デザインを始める前に念の為に確認するようにしましょう。
印刷物のデザインでの正解は「高解像度300ppi」です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?印刷物のデザインをする上では、どれも知らないとトラブルにつながることばかりですので、デザイン初心者の人はぜひ一度復習して頭に叩き込んでおいてください。
デザイン業界は本当に辛いことやしんどいことが多い業界だとは思いますが、その反面、面白い仕事やいい刺激も多いですし、その中でもデザイナーという職業は、大変な職業ですが本当に素晴らしい仕事だと思いますので、諦めず身体を壊さず楽しんでください!
以上!最後まで読んでいただきありがとうございました!
今井
この記事を書いた人幼少期に鎌鼬に腕を斬られた男(本人談)。学生時代はバスケに没頭。得意な絵と、好きなスポーツで仕事がしたいと考え、専門学校卒業後はバスケグッズメーカーに入社。2年間勤めた後転職し、2社目で谷川と出会う。デザイン部部長まで出世するも、独立のため退職。谷川から外注として仕事を受ける中、声をかけられ入社、現在に至る。全てにおいて信頼が厚く面倒見がよい。ディレクション力の更なる向上を目指し、日々仕事に取り組んでいる。