Date: 2020/11/16

おせちもいいけど皿鉢もね!はちきんが語る寿司の魅力と高知の食文化

本来ならば、デザインやWeb、はたまたマーケティングにまつわる「ためになる話」をブログで書くべきですが、どういうわけかお腹が空いて仕方ないので、今回は大好物の「お寿司」と、せっかくなので故郷高知の郷土料理について話をさせていただきます。 冒頭から無理矢理感がいなめない小松です。

江戸前だけが寿司じゃない!魅惑の郷土寿司

先日、久々に【世界ふしぎ発見!】を視聴しました。 知識豊富でいつまで経っても変わらない黒柳徹子さんに、おとぼけキャラの野々村くん。 さらには、スーパーひとし君がボッシュートに入るときの「ティリティティティ・ボワワワワァ〜〜ン♫」のSE(サウンド・エフェクト)も以前と変わらず、安心感すら覚えます。 その番組で「押し寿司(箱寿司)」の発祥の地が大阪で、「手まり(手毬)寿司」は京都だったことをはじめて知りました。 どちらのお寿司もそれぞれの個性があり美しさがあります。

押し寿司(箱寿司)

押し寿司とは、基本的にすし飯と具材を一緒に押し固めたものを指します。 木箱で押す「バッテラ」や巻きすできゅっきゅと巻き上げる「サバ寿司」などが有名です。 どちらもしめ鯖を使ったお寿司で、厚めの昆布に巻かれていたり、薄い昆布が上にぺろんとのった(ここは乗ったが正解でしょうか)ものまであります。 基本的にはこちらの昆布は外して食べるそうですが、どうせなら外したバージョン、そのままバージョン両方楽しみたいところ。 もちろん外したあとの昆布も惜しみなくいただきます。 個人的には、酢飯に白ごまがたっぷり入った大葉入りのバッテラが好物。 ただ、箱寿司には馴染みがなかったので大阪で老舗の吉野寿司に行ってみようと企んでいるところです。 美味しいのはもちろんのこと、箱に詰めたときの美しさを考えて下ごしらえされた酢で〆られた鯛や、焼きあなごがトッピングされた押し寿司が、箱の中に隙間なくぴちっと収まっている様は、もぅため息が出る美しさ。

手まり寿司

一方、手まり寿司は元々舞妓さんのために作られた京都独自の文化食ともいわれています。 ひとくちサイズで丸く可愛らしい手まり寿司は、口を大きく開けなくても食べられるので食べ姿もとても上品です。 魚から漬物まで様々な具材がのせられているので彩りも豊かで、まさにフォトジェニックなお寿司! ただでさえ女性にやさしいお寿司ですが、もれなく映えるのがニクイ。 ひな祭りなどでよく見かけるので、てっきりお子さま専用の可愛いお寿司=自分には関係ない食べ物だと思っていました。 食べていいんだ! 「押し寿司(箱寿司)」「手まり寿司」両者ともに、多色、単色はさておき同じサイズ感のオブジェクトが整然と並ぶ美しさがあります。 Webでいうグリッドデザインですね。 (やっと出たデザインの話がこれ) 一方変わって、こちら。 揃っているのは寿司一切れ分の横幅くらいでしょうか。 鯖にいたっては頭と尻尾が立っていますが、見事に魚の姿を活かしています。 この姿寿司がメインとなるのが、みなさんご存知の「皿鉢(さわち)料理」です。 (以下:皿鉢)

まずは皿鉢とはなんぞやをご紹介

一言でいうと、海山で摂れた様々な食材を、直径約40〜50cmほどの大皿に豪快に盛り付けまくった高知県の郷土料理です。 元々は皿鉢は神事のお供え物で、お供えをしたあとに皆で分け合って食べたことがはじまりのようです。 東西に長い高知県では地域によって多少の違いはあれど、大皿の中央にはお頭付きの鯖やカマスの姿寿司(洋風は伊勢海老)が鎮座し、その周りを煮物、揚げ物、焼き物などの「組み物」と呼ばれる料理が取り囲みます。 それだけでは物足りなかったのか柚の酢が香る鯖寿司の横に、お口直しの羊羹や果物が添えられることも。 他県民からするとまさにカオス! 中にはメイン不在の皿鉢もありますが、カニの爪や、大丸(ゆで卵が丸ごと入ったかまぼこ)、色とりどりの羊羹も同席しているのでまぁまぁ派手です。 Webデザインに置き換えてみると、既存の枠に囚われず、自由に画像やテキストをレイアウトする、今流行りの「ノングリッドデザイン」といったところでしょうか。 (デザインの話は以上です)

いつもそばに皿鉢

冠婚葬祭やお正月、法事の際には、ほぼ毎回皿鉢料理が出てきました。 人生の節目=皿鉢!と言っても過言ではありません。 料理が好きでこの皿鉢を自ら作る強者もいますが、ほとんどは仕出し屋さんに事前に注文して、法事などの行事当日に持ってきてもらいます。 ちなみに、1皿12,000円〜15,000円の価格帯が最もポピュラーです。 老若男女大勢で皿鉢を囲み、食べたいものを好きなだけ自分の小皿にとって食べる。 様々な料理が入っているので、気を抜いたら危うく迷い箸をしそうになります。 子供たちによるエビフライや唐揚げの争奪戦がおこり、おばちゃんたちの「いや、これ珍しいちや」「どうやって作っちゅうろう〜」と組み物談義がはじまる。 酒飲みの女性が多い高知ですが、すべての料理が一枚に揃っているので途中で席をたって次の料理を用意する必要がありません。 せいぜい席を立つのは、熱燗がきれて沸かしにいくときくらいでしょうか。

姉さん、皿鉢がピンチです!

好きなものを自由に取って皆で食べようぜスタイルの皿鉢ですが、新型コロナウイルスの影響から現在は注文が激減。 人が集まる機会が減り、密を避ける動きになっているので致し方ありません。 しかし、これまで皿鉢を食べたことがない、県外に嫁いで食べる機会がなくなった方に朗報です。 なんと皿鉢の通販サイトがありました!! すえひろ屋 価格:10,800円(税込) 土佐料理 司 価格:16,000円(税込)/オリジナルプレート付き 毎年おせちを注文するという方も多いと思いますが、いつもと違う高知の郷土料理「皿鉢」をこの機会に試してみるのはいかがでしょう。 こんなときだからこそ、少し違う年末年始の楽しみをデザインしてみるのも有りだと思います。

せっかくなので、余談

その土地の食材を使い、風土にあった作り方がたくさんある「郷土寿司」。 冒頭でご紹介した、「押し寿司(箱寿司)」「手まり寿司」もそうですが、せっかちな江戸っ子が手で摘んでさっと食べられる「江戸前寿司」や、寿司の原点ともいわれている「なれ寿司」も郷土寿司の一種です。 その郷土寿司の種類が日本一多いのが、まさかの「高知県」でした! その一部がこちら。

押し寿司(箱寿司)の親戚風

●こけらずし 四角い木枠に酢飯と具材をどんどん重ねていく「押し寿司」で、デコレーションケーキのようなカラフルな見た目が特徴。 ご飯を5升使うそうですが、一体何人前になるんでしょう。

手まり寿司にも見えるよね

【左】田舎ずし(いなかずし) 全国的に見ても珍しい野菜を使ったお寿司です。 昆布や海苔が手に入りにくかった時代、山でとれる椎茸やタケノコなどでお寿司を作ったそうです。 個人的にはこんにゃくと四方竹(タケノコの仲間)が特におススメ! 【右】きびなごのほうかぶり 小さなキビナゴ(またはイワシ)を背開きしたあと酢で〆てから米ではなくおからを包んだお寿司。 見た目が、ほっかむりをした人のようだというところからこんな名前になったらしい。 ほっかむりって、ちょっと可愛らしい。 しかもヘルシー!!! お寿司の話と言いながら、皿鉢の話が多いのはどうか気にしないでください。 そして「はちきん」てなんぞや?と思った方はウィキ先生をご覧あれ。 当方、男勝りで負けん気は強い、よく働くと自負しております。 長距離の移動はまだまだ気を遣いますが、郷土寿司をはじめ、各々が懐かしいと思える郷土料理を囲める日が早く訪れますように。 写真出典元:農林水産省Webサイト

小松

この記事を書いた人

高知出身のAND SPACEのオカン的存在。生来、絵を描くことが大好きで、壁に描いては親から目玉を喰らっていたほど。専門学校卒業後は印刷会社・広告代理店で10年以上デザイナーを務める。高知県美術展覧会グラフィック部門で最高権威の「特選」を受賞するなど、商業デザインとは違ったベクトルの作品づくりも活動中。紙からWebまで、クラシック・流行りのテイスト、デザインなら何でもござれで幅広く活躍中。