Date: 2019/09/04

BtoB ECサイトを発注・開発する前に確認すべきコト

働き方改革や業務効率化が重視されるようになった近年。
AND SPACEでも今まで電話やFAX、紙伝票で受発注を行っていた卸売業者さんやメーカーさんから、法人専用・お得意先様専用のECサイト(ネットショップ)制作のご依頼が増えてきています。
この記事では、BtoB ECサイトを始めるにあたり、業者に発注する方にも自社で開発する方にも、あるいは開発を依頼された業者さんにとっても重要になる、確認事項や注意事項をまとめました。

目次

  1. 外注する場合の費用の目安は?
  2. BtB ECサイトを始めるメリット
  3. BtB ECサイトを始めるデメリット
  4. パッケージシステムにするのかフルスクラッチにするのか
  5. どこまでの情報をオープンにするのか
  6. 商品情報を誰が入力するのか
  7. 補助金は使えるのか
  8. 会員区分をどうするか
  9. 基幹システムがある場合、連動させるのか
  10. 基幹システムとECサイトの保持データの割り振り
  11. サーバーは既存のものを使うのか新たに用意するのか
  12. サーバーの種類はどうするか
  13. サーバーの容量などのスペックはどの程度にするのか

外注する場合の費用の目安は?

ほとんどの方が気になる費用、内容やボリュームによって大幅に変わりますが、システム会社などに開発を依頼する場合のザックリとした妥当な費用感は以下のとおりです。
※商品詳細の情報整理や作り込みまでを含めると商品点数によって費用が変わりすぎるため、以下の金額は自社で商品情報を用意する場合の目安です。

カラーミーショップやSTORES.jpなどの
カートシステムを利用して簡易的に作成する場合
30〜70万円程度
EC-CUBEやBtoBショッピングサイト用パッケージシステムなどを
利用して作成する場合
100〜250万円程度
フルスクラッチ(完全オーダーで独自のシステムを構築)で
作成する場合
300〜500万円程度
フルスクラッチで図面からの検索機能やサイズオーダーなど
独自性が高い機能を付与する場合
500〜900万円程度

BtB ECサイトを始めるメリット

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受発注をECサイトで行うことの主なメリットは以下のとおりです。

ミスが起きにくい

口頭や印刷物ではなく管理画面で一元管理できるため、漏れやミスが起きにくくなります。
「管理画面だけでは逆に漏れや見落としがありそう」と心配されるお客様もいらっしゃいますが、そういった場合は受発注内容をメール、FAX、LINEでも通知するように作ることもできます。
ただし、FAXやLINE連動は一般的なECパッケージシステムでは対応が難しいため、フルスクラッチでの対応となるのが一般的です。

運用が楽になる

紙や電話で受注した場合、基幹システムやエクセルなどの受発注管理リストに再度入力する必要があり手間がかかりますが、自動的に受注と連動するBtoB ECサイトであれば大幅に運用が楽になります。
また、データもコピペできるため他のツールなどに情報を流用したい場合も安易にでき、顧客とのやりとりも定型文をボタン一つで送信できたりとスムーズになります。
それらにより、人件費の削減・ルーチンワークの減少によるスタッフのストレス低減・担当者変更時の引き継ぎの簡略化など、得られる恩恵は計り知れません。

新規顧客の獲得ができる

通常の受発注だと、当然webへの露出がないので新規顧客の獲得には別の媒体やツールが必要となりますが、BtoB ECサイトはきちんとSEO対策(検索で上位に表示されるように対策)を行ったり、リスティング広告などのweb広告を使用することで、受発注管理と同時に新規顧客の獲得を行うことが可能です。

基幹システムと連動することで受発注が一元管理できる

顧客情報や商品情報、受発注情報を複数のツールで管理すると、面倒かつミスの原因となりやすく、情報漏洩のリスクも高まります。
使用するシステムによっては基幹システムとの自動連動が可能なため、上記のようなリスクとコストを削減することができます。

BtB ECサイトを始めるデメリット

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当然、デメリットもあります。
当たり前のことばかりではありますが、ここが導入への最大の障壁となるため、自社役員やクライアントに導入を納得させるにはここをクリアしなければなりません!

費用がかかる

当然のことながら、費用がかかります。
もし自社開発するとしても人件費がかかるため変わりはありません。
これが頓挫してしまう最大の原因です。
導入を推し進める場合、削減できる人件費の算出や新規顧客獲得の重要性など、上記のようなBtoB ECサイトで受発注を行うことによる具体的なメリットを提示する必要があります。

スタッフのストレスとなってしまう可能性がある

今までと運用方法が変化することで、スタッフに負荷やストレスを与える可能性があります(モチベーションが高いスタッフ以外は基本的に変化を嫌います)。
ただし、サポート体制が整っている業者に開発を外注する場合であれば、運用のトレーニングやレクチャーをしっかりしてもらえるので、ストレスを大きく緩和することができます。
しかし、どんな業者でも口を揃えて「しっかりサポートします!」と言いますが、実際はわからないので(僕の体感値では9割がしてくれません)、口頭で「サポートしっかりしてますか?」と聞くのではなく、具体的な来訪回数やサポート期間、サポート体制の体系図などを提出してもらうようにしましょう。

ネットが苦手な得意先が嫌がる

これは比較的多く、かつ完全解決することが難しい問題です。
万全な解決策とは言えませんが、実際に今までAND SPACEのお客様達がとった対応方法はこのような感じでした。

先行投資だと思ってレクチャーに力を入れる

確かにネットが苦手な得意先にとって急に新しいやり方を押し付けるのは気が引けます。
そこで、先々の人件費の削減となるための先行投資だと思って、得意先向けにレクチャーを実施されました。
レクチャーの方法は得意先まで行って実施する方法や、合同説明会を行う方法があります。
合同説明会を行う場合であれば、開発を依頼している業者さんに合同説明会の講師までを含めて依頼するのも有効な方法です。

自社スタッフが都度手入力する

ネットが苦手な得意先さんに限ってのみ、電話またはFAX対応し、後から自社スタッフが管理画面に受注内容を入力するという方法を選ばれたお客様もいらっしゃいました。
本末転倒な気がしなくはないですが、特に大口顧客の場合であれば、限られたお客様にだけこのような特別対応を行うという方法もあります。

ついてこれない業者さんはいらない!と宣言する

一番乱暴な方法ではありますが、この方法を選んばれたお客様は「これからの時代、効率化は必須。この時代の流れについてこれない企業はいずれダメになる」と豪語されて英断されました。
賛否両論ある結論ではありますが、個人的には好きな決断です。


メリット・デメリットを踏まえた上で、ここからはBtoB ECサイトの構築を前向きに進めていく際の、具体的な事前準備・確認事項についてまとめました。

パッケージシステムにするのかフルスクラッチにするのか

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それぞれのメリットデメリットをザックリまとめると、利便性や自由さを優先するならフルスクラッチ、多少不便でも費用を抑えたい場合はパッケージシステムです。
ただしどこまでの機能になるとフルスクラッチにする必要があるのか、判断は難しいところです。
どちらにしようか悩んでいる場合は、予算度外視で必要な機能や特性を全て書き出し、複数のパッケージ業者とシステム開発会社に機能ごとの金額がわかる見積書の提出を依頼するのも良い手だと思います。

どこまでの情報をオープンにするのか

BtoBという特性上、公開して良い情報が限定的になることも多々あります。
BtoB ECサイトでは販売価格(上代・売値)、卸売価格(下代・卸値)や、ロットでの販売価格、そもそも一般消費者に見られてはいけない商材や販促物などを取り扱うこともあります。
そのような場合、ログインをしているか否かで表示情報を変えたり、そもそもサイト自体をIDとパスワードを入力しないと見られなくする、または検索にひっかからないようにしてURLを知っている人だけが買えるようにするなど、複数の選択肢から議論する必要があります。

商品情報を誰が入力するのか

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地味に面倒なのが商品情報の入力作業です。 基本的な商品情報は基幹システムやエクセルでまとめられていることが多いですが、ユーザーが見て「買いたい!仕入れたい!」と思ってもらえるようにするには商品詳細情報の作り込みが必要です。 商品点数によっても大幅に作業量が変わってきますが、1,000商品を超えてくるとシステムの開発コストを上回る可能性すらあります。
誰がこの嫌な作業を担当するのかも事前に確認しましょう。

補助金は使えるのか

最近ではIT導入補助金など、企業のIT化を推進するための補助金も色々と用意されています。
本来なら300万円かかる開発費の半額、時には全額を国が負担してくれる場合もあります。
以下のサイトでも色々と説明されていますが、よく分からん!という人は商工会議所や補助金申請を専門で行っている業者さんもありますし、システム開発会社自体がその辺りの知識を持っている場合もあります。
まずは一度気軽にあちこちに相談してみましょう!(まれに詐欺師みたいな人もいるので、複数箇所に相談するなどしてリスクヘッジはしてください
参考:IT導入補助金オフィシャルサイト

会員区分をどうするか

取扱商品によっては得意先の会員区分を分ける必要があります。
「この得意先の取得免許ではこの商品は販売できない」といった販売商品ごとで会員区分を分ける場合や、単純に卸値を分ける場合など、どのような区分で会員をグルーピングするのか確認します。
会員区分を複数作れるパッケージシステムは種類が少なく、フルスクラッチで開発する場合でも会員区分を後から変更するのは大工事が必要なため、特に重要な確認事項と言えます。

基幹システムがある場合、連動させるのか

基幹システムをお持ちでない場合、開発の敷居はグンと下がります。
また、BtoB ECサイト自体を基幹システムとして使うこともできます。
そもそも基幹システムとはなに?という方はこちら

基幹システムがある場合、新たに開発するBtoB ECサイトと情報を連動させるのか否かによって開発にかかる期間、費用、制限、面倒臭さは大きく異なります。

基幹システムとECサイトの保持データの割り振り

基幹システムとBtoB ECサイトを連動させる場合、どちらにどのデータを持たせるのかも重要な確認事項です。
通常の受発注だと、顧客情報、商品基本情報(価格・商品名・商品ID・商品カテゴリなど)、商品画像、商品詳細情報、受発注情報、キャンペーン情報などが扱うデータとなります。
特に基幹システムとBtoB ECサイトの開発者が違う場合は、開発発注者、実際の管理者を含めた4者での綿密な打ち合わせが必要になります。

サーバーは既存のものを使うのか新たに用意するのか

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すでにホームページやメールなどでサーバーを使用している場合に、新たに開発するBtoB ECサイトをそのサーバー内で運用するのか、BtoB ECサイト専用のサーバーを用意するのかも重要な確認事項です。
受発注の量や想定されるアクセス数、商品数にもよりますが、AND SPACEでは今までだいたい新しく専用のサーバーをご用意することが多かったです。

専用のサーバーを用意するメリット
  • EC側とそれ以外のサーバーのどらかに障害が起きた時に、リスク分散できる
  • サーバーごとに役割が明確に分かれているので管理者が分かりやすい
  • EC側のデータベースやサーバーにトラブルが起きた時にホームページやメールなど他の領域に影響を及ぼさない
専用のサーバーを用意するデメリット
  • ランニングコストが増える
  • 複数のサーバーを管理するという意味ではサーバー管理者の負担が大きくなる可能性がある

サーバーの種類はどうするか

新たにサーバーを用意する場合、サーバーを据え置きにするのか、クラウドにするのか、共用やVPSにするのかなどの選択が必要です。
AND SPACEでは管理者の負担が増える、単純に扱いが怖い、アップデートがしにくい、社内の人間に対してはむしろセキュリティが甘くなるなどの点から据え置きは非推奨としています。
サーバーの役割や種類、選び方についてはこちら

サーバーの容量などのスペックはどの程度にするのか

基本的にはサーバーのスペックを高くすればするほど容量が大きく安定しますが、コストも比例して高くなります。 専門家以外ではどの程度のスペックが必要かは分からないため、ザックリとした想定でも良いので、以下の内容を業者や詳しい知り合いなどに聞いてみましょう。(開発会社1社だけに聞くと正しいか分からないので、すごく信用している場合を除き、必ず複数人に聞くようにしましょう)

  1. 商品点数
  2. 1商品ごとの商品画像数
  3. 月間の受発注回数

費用やパッケージシステムの比較など、確認すべきことは挙げるとキリがないですが、基本的な確認事項はこんなところです。 ちなみにAND SPACEでもBtoB ECの開発は得意としているところですので「読むのめんどくさい!」「考えるの面倒だからとりあえず話聞いてそっちでまとめて!」という方は、一度お問い合わせくださいませませ。

谷川

この記事を書いた人

「本気でぶつかる」第一人者。17歳でロンドンへ短期留学。18歳でデザイナーを目指し制作会社に入社。次第に個人での受注が増え、23歳で起業。以降、じわじわ組織化していく。2021年に社長を退き、現在は顧問的なポジションに。座右の銘は「どうせなら全力」。株式会社デリシャステイク取締役、株式会社BOB不動産取締役、株式会社上田酒店デザイン事務所取締役、大阪総合デザイン専門学校非常勤講師を兼任。肩書が多いため胡散臭いが、会ってみるとホントに胡散臭い(がんばれ!)。