Date: 2017/02/12

速くても読める!高速道路標識の進化

約20年前に必死で取った免許が、今ではほとんど役に立っていないペーパードライバー小松です。 ペーパーではありますが、高速バスのお陰で月に最低2日は高速道路を行ったり来たりしております。 狭くて疲れるけれど、高速バス万歳!!(←そんな呑気なことを言っていられるのはあと何年か…) うん10年前から何気なく見ていた高速道路の標識。 今はカーナビやGoogleMAPなどのナビゲーションが充実しているので、運転する方ですら見る機会が減ったものの、全く見ずに迷わず降りれるぜ!って胸を張って言えるのは普段から走り慣れている、トラックあんちゃんぐらいでしょう。 その標識で使われている地域名などの和文フォントは独自のものを使っているのは知っていましたが、最近になってそのフォントがお馴染みの◯◯に変更されているとは!

先日見たテレビ番組で、標識の文字には複数の穴が空いていることを紹介していました。 近くで見たらブツブツです。 この理由としては朝日や夕日など強い逆光になった時でも標識の文字が読みやすくするためとのこと。 これはこれで、ドライバーに配慮していて素晴らしい工夫だなぁと感心しまして、そこから色々と調べていくうちに標識に使われているフォントの進化が分かりました。

45年以上使われてきた公団ゴシック

1963年(昭和38年)に現在の標識レイアウトの原形が固まり、以降高速道路標識に使われてきた和文フォントが「道路公団標準文字(通称:公団ゴシック)」です。

いわゆる「公団文字」は、1963年(昭和38年)の名神高速道路開通時に採用され、以後永年にわたって高速道路の案内標識のフォントに用いられてきた。名神の開通当時、日本には市販のフォントセットがあまり流通していなかったことを踏まえ、当時の日本道路公団の関係者により、一つ一つのフォントが必要に応じて製作されたという経緯がある。 フォントの特徴として、基準枠一杯に文字を配置するために字の画を直線的に造形し、加えてすべての画を等幅の直線で描くために細かい画やハネを独自判断で省略したという点が挙げられる。 このような造形が決定した経緯については、山根一眞が自著の中で、標識の文字が標識の120m手前で読めなければならないことを基準に定められたこと、文字の大きさをドイツのアウトバーンに習って高さ50cmに決めたこと、文字幅がすべて等幅である点についても、文字を描くのに反射材テープを用いていたためであることなどについて言及している。 引用元:Wikipedia

悪天候でも、遠方からでも読めるようデザインされた「公団ゴシック」は、時速100kmでビャーーっと走ってても、100~150m手前から6秒以内で文字が認識できる、まさに高速道路の為のユニバーサルデザインフォントです。

例えば


hyoshiki

ほら、普段使っている漢字と違いますよね。 簡略化されているだけでなく、カクカクしていてなんだか可愛らしいんです。 正確に表現することよりも、分かりやすさに重点を置いたフォントなんですね。

公団ゴシックを再現したフリーフォントのご紹介

公団ゴシックをデジタル化したフォントがあるのは皆さんご存知ですか? 「GD-高速道路ゴシックJA」は、わざわざ標識を現地取材し、標識として使用されていない文字についても、既存の書体から組み合わせるなどして、2005年からぱんかれ(pumpCurry)さんという方が個人で制作されてきたフォントです。
現地と一言で言っても全国津々浦々ですからね。 はぁ〜、と〜っても気の遠くなる作業… ぱんかれさんのクリエイター魂とフォント愛を感じずにはいられません。

GD-高速道路ゴシックJAダウンロード元:GD-高速道路ゴシックJA(商用利用可能)


しかし、ぱんかれさんがフォント製作をしてくださる以前から、「公団ゴシック」の標識は全国の高速道路で使用されてきました。 標識は必要に応じて製作されてきたため、文字ごとのバラつきや統一感に欠ける、省略しすぎ!など様々な問題点があったようで、遂に2010年にNEXCOにて「より視認しやすい標識」の見直しが入ったのです。 これぞメス!

高速道路標識、ネクストステージへ

上記の背景もあって、高速道路標識の技術基準の見直しのタイミングで、「公団ゴシック」に代わるフォントとして、視認性に優れた角ゴシック体を比較検討したそうです。

●国土交通省の推奨フォント「ナウ」、「タイプバンク」、「新ゴ」
●日本道路公団が行った過去の視認性実験の結果から選んだフォント「ヒラギノ」

遠くから見たり、ぼかしたり〜 NEXCOの様々な実験により、遠方や悪条件でも一番視認性が高かった「ヒラギノ」が選ばれました!!

「ヒラギノ角ゴシック体」と言えば、2001年にリリースされたMac OS X 10.0でOSの内蔵フォントに採用され、iPhoneやiPadなどのiOSでも使用されていて、Macユーザーに限らず多くの人が馴染みのあるポピュラーなフォントであることも選ばれた1つの理由かと思います。

元々、1993年に大日本スクリーン製造(後のSCREENホールディングス。事業はSCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズが承継)より発売された「ヒラギノ角ゴシック体」が、これほど各方面で使用されるとは。
使用頻度の高さからも、誰もが読みやすい優れたフォントということが分かりますよね。 最近webデザインする際、もっぱら游ゴシック体を選んでいましたが、 いや〜ヒラギノ恐るべし!!

引用元:より視認し易い高速道路案内標識を目指した標識レイアウトの変更について

小松

この記事を書いた人

高知出身のAND SPACEのオカン的存在。生来、絵を描くことが大好きで、壁に描いては親から目玉を喰らっていたほど。専門学校卒業後は印刷会社・広告代理店で10年以上デザイナーを務める。高知県美術展覧会グラフィック部門で最高権威の「特選」を受賞するなど、商業デザインとは違ったベクトルの作品づくりも活動中。紙からWebまで、クラシック・流行りのテイスト、デザインなら何でもござれで幅広く活躍中。