Date: 2020/08/06

コンテンツとしての動物園を元獣医師が真剣に考えてみた

株式会社AND SPACE生物部(部員募集中)の下間です。
突然ですが夏休みといえば動物園!
そんな季節がやってきました。
広告やらWEBやらなんだかビジネス臭の強い業界にお引越しをしてきて、早いもので丸々9ヶ月が立ちました。
そんなこんなで今回は動物園の成り立ちから集客を目的としたコンテンツ作りまでを真剣に考えてみました。

※本記事の内容はすべて個人の見解です。賛否のご意見随時受け付けております。

日本における動物園とは

動物園の役割

まず、日本における動物園の役割とは何なのでしょうか。一般的には「種の保存」、「教育」、「調査・研究」、「レクリエーション」という4つの役割があるとされています。

・・・・・が、

本当に・・・?

確かに、もっともらしく感じる役割であり、日本の動物園を見たときになるほどと納得する人も多いかもしれません。
動物園肯定派でも否定派でもない私個人としても、そのような施設であって欲しいとは感じます。

ですが、私が感じる日本の動物園に感じる矛盾をいくつか解説していきたいと思います!

歴史が語る日本における動物園の気質

日本で初めての動物園は言わずもがな、上野動物園です。そもそもをざっくり言うと、明治政府が西欧諸国に置いて行かれないよう、産業振興や近代都市建設のための手段として成立しました。

当時、エンターテイメントに飢えていた国民は動物園に熱狂し、多くの人々が押し寄せたと言う感じのようです。

つまり、行政が行うレクリエーション、市民サービスの一環として日本の動物園は存在しています。
研究や教育、種の保存というのは、言ってしまえば後付けなわけで、だからこそ、各都道府県に動物園や水族館が存在しうるのでしょう。

一方海外は、動物学協会や野生動物保護協会が動物園を運営しており、まさしく「動物学の園」として動物園が発足しています。
そのため、博士号をもつ研究者がいるのは当たり前、研究機関として確立されています。

なんなら日本の動物学は、動物園より歴史が浅いです。

種の保存と言いながら、外来種ばかりじゃないか!

動物園で鉄板かつ人気の動物といえば、ライオン・ゾウ・チンパンジー・キリンといったところでしょう。

すでにお分りいただけただろうか。。

日本の動物園なのに、全部外来種です。
強いていうなら、日本サルも鉄板ではあるかもしれませんが、基本外来種が人気、ゆえに優先的に展示候補とされる動物は外来種になります。

日本は日本そのものが生物多様性のホットスポットとされており、固有種の数は生物起源の地とされるガラパゴス諸島よりも多いと言われています。
日本人が日本の動物を知らない現状を、非常にもったいなく感じるのは私だけでしょうか。
種の保存と言いながら、ノアの方舟には一体何種類の日本固有種が乗れるのでしょうか。。

コンテンツの作り方が下手

これまでの話だけでも、日本の動物園がいかにレクリエーション型か共感いただける方がいれば幸いなのですが、そうだとした場合、エンターテイメントとしてのコンテンツ作りが下手ではないかと感じてしまう今日この頃。

海外を例に挙げると、海外の動物園では(注:すべてとは言いませんが)、展示(あるいは檻)一つ一つをコンテンツとして捉え、コンセプトの立案から、展示スペースへの落とし込みまでを徹底して作り込みます。工程にはグラフィックデザイナーや建築デザイナーなども関与し、園内全体の統一感を生み出しています。

かなりドライに表現すると、日本の場合はなんとなく展示スペースを広くして、なんとなく行動展示っぽいことをしてみたけど、結局予算の壁によって熱意ある飼育員の理想には届かない、結局集客にはより目新しい動物を、お客さんが飽きたらまた新しい動物を、赤ちゃんが生まれたらお披露目・・・というような事が現状なのではないでしょうか。

それでも動物園の来場者数は年々減少傾向にあるようです。ぴえん。

そういうコンテンツ作りには限界しかなく、既存の動物たちをどう見せるか、どのように来場者に参画してもらうかを考えないといけない気がしています。

動物園のこれからと勝手にコンテンツを検討してみた件

至って真面目な話で、レクリエーション型とも捉えれる日本の動物園は広告やデザイン関係企業とビジネスパートナーとしてもっと近い存在になってもいいのではと思っています。
そして、歴史背景や地理的特性が海外諸国と大きく違う日本では、海外の後追い的な展示や手法をとるのではなく、全く違う方向性で発展していく必要があるのではないかと感じています。日本の日本の動物のための日本人による動物園が見てみたい、そんな思いでいます。

というわけで、下間プレゼンツ『こんな企画動物園でしたら楽しそう』

※企画の荒さはご愛嬌ということで。。

※アニマルウェルフェアの考慮は大前提

動物園の動物はみんなのペット

  • 数種類の動物をピックアップして1円単位から募金をできるようなシステムを作る
  • 集まったお金は動物の飼育環境改善に使われる
  • 参加型にすることで、展示動物への興味を促す

動物の説明文章、長すぎるし、ぶっちゃけみんな読んでない問題に対して

  • すべての動物にキャッチコピーをつけてキャラクター設定をする
  • ポップも動物によってデザインを変え、直感的に対象動物を理解しやすくする。
  • 展示空間の作り方を自然に近づけるというよりは、キャラクターに応じた作り込みをする
  • ランドスケープイマージョンの変化球

イマージョンというのは、英語のイマージョン教育を連想すると分りやすいと思うのですが、英語漬けの生活環境にいると英語が早く習得できるように、どっぷりその世界に浸かることで学習効率を挙げる考え方です。

日本の固有種博覧会

そもそも日本の固有種がなぜこんなにマイナーなのか考えてみました。
ちなみに固有種の代表格は、ニホンカモシカ、エゾシカ、ホンドタヌキ、モモンガ、ニホンウサギ、イリオモテヤマネコ、オオサンショウウオetc.

おそらく、数が少ない、離島に多い、地味が主な要因かと思われますが、数が少ない点に関しては動物園として取り組む意義は多いにありそうです。

ライオンのような派手さは確かにありません。
アフリカ人も「俺たちの国の動物いけてる」って思っていると思います。
そもそも野生動物の王国=アフリカ、百獣の王=ライオン 子供時代に刻み込まれるこのキャッチフレーズがずるいと思います。

lion

でも、実は一時期、日本人に救助されたタヌキが「インターネットがタヌキにゾッコン」という大げさな見出しを大手アメリカメディアが掲げたほど話題になった時期があったので、外国人が変な漢字を刺青に入れるように、日本固有種はインバウンドに有効なのかもしれません。
外国の方は、タヌキは日本の映画やアニメや寓話に出てくる空想上の動物だと思っている人も多いようです。

tanu

「かわいい」の文化が日本でできたみたいに、世界から見た時の異質性みたいなものが打ち出せれば、面白いのかなあと思ったりします。

それで子供たちが日本の自然を好きになってくれたら、ハッピーな気がしてきます。

一日子供飼育員

  • あくまで動物園は子供のためにあるべきという視点
  • 多分子供たちは動物に触れたい、お世話したい、この柵の向こうへ行きたいと思っている
  • 飼育員さんへの憧れが強い子は多いはず
  • 1日数名の子供を先着で子供飼育員として募集(有料)

猿山ならぬ人山

  • これまた子供シリーズ
  • 動物園で自然体験ないし、参加型体験をしてもらいたい
  • 猿なら簡単に攻略できるジャングルジムを設置した猿山の横に人用の同じものを作る
  • 展示のポップはサル目ヒト科ヒト属ヒト

最後に。。

勝手につらつらと書きましたが、あらためて!動物園の存在については肯定派でも否定派でもありません!

むしろ、関係者の方々に対するリスペクトは人一倍あるつもりです。

ご拝読いただき、ありがとうございました。